『減災収納』で、「丁寧に片づける」ことを私がすすめる理由

 

こんにちは、暮らしのアドバイザー土井けいこです。
「暮らしがラクになる『減災収納』」。
短期集中連載、今日は5回目です。

『減災収納』という暮らし方のきっかけとなった、
阪神・淡路大震災での私の被災体験をお伝えしています。

 

自分で、大切な暮らしの始末をつけるのは辛い。

 

地震のあと片づけって、すごく残酷です。

理不尽な事態にやり場のない気持ちを抱えながら、
しかもメチャクチャな状況と向き合い、
「暮らし」を処分しなくちゃいけないんです。

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↑写真は1995年2月5日 
キッチン片づける夫の姿 着ている服は知り合いからの救援物資

 

当時の私にも理不尽な状況への憤りはありました。

建物が「被害なし」。

なぜ?

そんな中の片づけ作業でした。

焼けずに残ったものを
なんとか誰かに届けたい、という思いがあり、

燻されたにおいのするものを申し訳ないと思う気持ちと、
自分の「暮らし」が焼けずに残ったことへの申し訳なさと、

使わないモノを抱え込んでいたことへの反省が
入り混じった気持ちで、
ひとつひとつ片づけていました。

だから、私の片づけは、なかなか進まなかったですね。

自分で、大切な暮らしの
始末をつけるのは辛いものです。

地震だけでなく災害で
「暮らし」がめちゃくちゃになった多くの人に共通の
辛さだと思います。

あの時は、友人夫婦が駆けつけてくれて、
テキパキと片づけて…
その様子をボーっと見ていた自分の姿を覚えています。

心がバラバラなとき、片づけは進みません。
代わりにしてくれる人の存在は本当にありがたいものです。

災害後の片づけボランティアって、
本当に必要ですね。

 

 

自分で始末をつけられない辛さがありました。

 

大地震で被害を受けた建物は
中に入ることさえままらないことがあります。

実際、形をなしていても、
いつ倒壊するかわからない怖さがあります。

私も最初に戻ったときは
こわくて部屋に3分としていられませんでした。

全壊の場合、
納得するだけ中を確認することもできず、
最小限のものしか持ち出せないケースも多いのではないでしょうか?

 

 OLYMPUS DIGITAL CAMERAいつも買い物をしていた近所のスーパー(↑)

 

大震災のあと、被災地では
「自分」の目の前で、
ブルドーザーで「解体」という取り壊しが進められます。
公費(補助)による解体は、
期限を切られて、取り壊しをせかされるような状況もあると思います。

立ち会わなければいけないだろうし
つらくても見届けないではいられない、とも思うのです。
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避難先に運ぶ収納家具を手に、つぶれてしまったスーパーの前で立ち尽くす私(↑)

 

私は、そういう状況の中で、
避難先から残った部屋を片づけに通いました。

交通寸断の中、何倍もの時間がかかったけれど、
すべてをあきらめた「暮らし」が焼けずに残ったことで、
とても強い気持ちが湧いていました。

 

だから、使っていなかった台所道具、
押入れに詰め込んでいた着ない服、
全部、ひとつひとつ確かめたんです。

 

確かめて、服は1点ずつ丁寧にたたみ、
袋に入れてサイズを書いて…、
そんなことをするものだから、
地震のあと片づけは一向に進まなかった。

つぶれてしまった自宅が取り壊しになった人から
「土井さん、ひとつひとつ確かめることができてよかった。
片づかなかったかもしれないけれど、それでいい。」
と言われました。

 

私は、燻された異臭がする家具などをもって
引越しをしました。

 

1年後聞いたのですが、
お隣の人は
お子さんが小さくて、手間をかける余裕がなくて、
燻された家財道具をすべて処分するしかなかった、とのこと。

自分で始末をつけるのはつらいことですが
それさえできない人たちもいた。
むごいことです。


私は、いつも講座で
「モノの処分を急いではいけない」といいます。

「ためたものは、
手を触れて、自分の気持ちを確かめて、
丁寧に振り分けましょう」
と、お話します。

それはこの時の体験が、原点です。

 

だから、『減災収納』で伝えたいことは
被害軽減を目的とした地震対策だけではありません


もし、「アッという間に片づく魔法があったら」
と思っている人がいたら、

自分の暮らしを「自分で片づけられる」というのは、
じつは望んでもかなわないことがある、
と知ってほしいのです。

「いつか一気に片づける」
じゃなくて
少しずつ丁寧に進めることに意味があります。

それが自分でできることは
幸いなこと、なんです。

 

 


posted : 2016年8月27日