暮らしのアドバイザー土井けいこです。
「暮らしがラクになる『減災収納』」
短期集中連載、今日は6回目です。
『減災収納』という暮らし方のきっかけとなった、
私の被災体験をお伝えしています。
暮らしを立て直すことに精一杯だった。
住み慣れた街を離れがたい、離れるわけにはいかない
様々な事情を抱えた人たちがいた中で、
私たちは、仮住まいながら、
新しい場所で暮らすことを選びました。
いろいろあって、勤めていた会社を退職した私は、
しばらくして、
ホームヘルプサービスの現場で学んだことを、
広く伝えることを仕事にしようと動き出しました。
と同時に、本格的に『減災収納』を始めた・・・、
わけではありません(笑)。
とにかく、仮住まいの3年間は、
暮らしをたて直すのに精いっぱい。
そのときの地震対策は、ホテルにあるような、
引き抜きタイプの懐中電灯を
いたるところに取りつけたくらいでした。
いたるところにつけたのはもちろん理由があってのこと。
真っ暗な中で脱出した体験がそうさせたのです。
よほどの恐怖感があったのでしょう。
仮住まいを経て、
現在の場所で暮らし始めることになったとき
いよいよ本格的に地震対策に乗り出した…か
といえば、なんと、まったく逆のことをしたんです。
引越しを機に、憧れの(笑)高さ180㎝もある
観音開きの食器収納を買ってしまいました。
かなり迷ったんですが・・・、
観音開きの中に、
お気に入りの食器がある状態に憧れていたんです(笑)。
↑ 現在の食器収納
阪神・淡路大震災の揺れ始めは、
室内には明かりが点いていたそうなんです。
高さのある家具が崩れるように倒れる瞬間、
観音開きの扉が勢いよく開き、食器が飛び出すのを、
夫は見ていました。
その話を聞いていましたし、
その結果の現場も見ていたのに。
「地震被害レポート」に、
広々暮らすために低い家具を主に使っていたことが
被害軽減につながった、と書いていたのに。
だからこそ迷ったのですが、それでも買ってしまった。
仕方がありませんね。
「『減災収納』という暮らし方」が始まりました。
ある晩夢を見ました。
大きな地震で観音開きの中の食器が飛び出し、
家具は倒れ、
食器は全部壊れてしまう夢でした。
夢を見た後、私は、
食器収納の扉に
揺れでロックがかかる耐震ラッチを取りつけ、
食器棚と床との間には
くさび状の転倒防止シートをはさみ込みました。
↑耐震ラッチ(左/イマオ「震護くん」旧型)
↑家具と床の間に楔型の転倒防止シートをはさむ
たったそれだけのことで、怖い夢は見なくなりました。
実は、対策を取っていなかったことが
気がかりだったんです。
この連載のはじめに
「地震に対する不安は、いろいろあると思いますが、
具体的な対策をしていないからかもでは?」
と、いいました。
そう思うのは、
この体験で、ひとつでも対策を取ると、
安心感がもたらされることを実感したからです。
ここから、私の地震対策=『減災収納』は、
本格的に始まりました。
私が長年実践してきた『減災収納』は、
絶対安全!を目指すものではなく、
被害を少しでも軽減するための工夫であり、
なにより、日々の家事がしやすくて、
視覚的にも快適であることを考えた工夫です。
↑昨日のキッチン
棚を拭きながら置いてあるものに手を触れ、
季節に合わせて入れ替え、
収納の中が雑然としてくれば中身を点検して入れ直し、
使わなくなっているものを取り出します。
どうしても実現したかった(笑)観音開きの食器棚は、
『減災収納』の象徴のような存在。
中の食器は出し入れのたびに点検して、
増減を繰り返してきています。
家具は、3.11のあともう一か所地震対策。
扉のラッチはそろそろ交換時期です。
快適に暮らしていくには、
しまうものもしまい方も地震対策も
点検・管理が欠かせません。
家じゅう順番に、点検を繰り返すことが管理です。
いつかではなく、
「今」の自分の力でできることを確実にしていきたい、
と思っています。
posted : 2016年8月30日