著書 『「収納が苦手」な人がラクに「片づけ上手」になれる本』 で伝えること

 

『「収納が苦手」な人がラクに「片づけ上手」になれる本』

本の「はじめに」「おわりに」を引用します。

 

片づけは、苦手意識をゆるめることから始めましょう!

 「私」の時間を大切に。
暮らしはラクに楽しく♪

 

家事・片づけをテーマにした講座を始めて20年あまり

 

講座や雑誌の収納改善の仕事で、「捨てられない」「片づかない」「暮らしがラクに回らない」という方にたくさん出会ってきました。インテリア誌PLUS1Livingコラムで読者の片づけの困りごとにこたえる「収納人生相談」を6年掲載。そんな中、苦手意識をゆるめる考え方など講座や雑誌でお伝えしていることを本にまとめたのが2011年3月。本書はその改訂版です。

近年、「ものを捨てる」ことが多くの人の関心ごとに。さらにSNSとスマホの普及で、「ミニマリスト」の暮らしや整然とした収納など憧れの暮らしが画像でいつでも目にできる時代になっています。
確かにものが少ない暮らしは身軽。でも、捨て方に無理があると続けられません。収納グッズをそろえてその時は整っても、使いこなせないと暮らしは再びごちゃごちゃに。

数年前から、そういう方の暮らしの困りごとをほぐす少人数講座を始めました。

受講生さんの悩みを聞いていると、自信が持てないでいる人や出口が見えないでいる人のおもいが伝わってきます。

学校保護者会の講座では、「土井先生のように、片づけが暮らしの中で身につくにはどうしたらよいのでしょうか」という質問を受けます。
私の家事・片づけは、「気持ちは楽に」「ルールはしっかり運用はゆるく」が基本。「らく片づけ&ゆる収納」で、どんな体調のときも暮らしはそこそこまわってきました。

本書では、毎日10分2週間で雑誌300冊処分方法を紹介していますが、50代半ば、体調が超低空飛行だった頃の私自身の体験談です。

片づけが苦手という方は、「捨てなくちゃ」「片づけなくちゃ」と思いつめているようで、案外漠然と断片的に頭の中でぼんやり思い浮かべているだけかもしれません。

そこで、今回の改訂版では、苦手意識をゆるめる第1章に続く第2章で、ごちゃごちゃの分け方を詳しく書き直しました。頭の中、気持ち、もの、スペースのごちゃごちゃが同時に少しずつ解消する方法です。第3章はラクに片づけられる考え方、第4章では家族も自分もラクな暮らし方を提案しています。

 

 

家族みんなで「らく片づけ&ゆる収納」を続ける意味

「らく片づけ&ゆる収納」は、ものがない状態を目指すのではなく、そこそこラクに楽しく家族みんなで続けられるようになるのが目標です。
「家族みんなで」と考えるには理由があります。

1990年代前半、私は神戸の企業で家事コーディネーターとして働いていました。共働きで子育てをする家庭、遺品整理、初めての私でもすぐわかる台所とそうでない家。様々な暮らしと出会い、ひとにわかりやすく暮らすことの意味、家族でできることを補い合う大切さを教わりました。それを自分でも実践し、暮らしを見直し整えていた最中、自宅で阪神・淡路大震災に遭遇。

1995年1月17日。暮らしは壊れあたりは大火に。窓から噴き出す黒煙を見たとき、「これからは今日を大切にしていく」とつぶやいていました。その後独立。現在に至っています。

いつ何が起こるかわかりません。確かなのはだれもが必ず高齢になること。 だからこそ、今日をラクに楽しく♪

講座で苦手意識や行き詰まり感がほぐれた受講生さんは、「頭の中すっきり!」「自分の力でこれからやっていけそう」と言われます。

 気持ちが軽くなると身体はラクに動き出します。ごちゃごちゃを片づける前に、苦手意識をほぐしませんか?

 

 

暮らしが管理できていると「もしも」への備えになる

この本の原本である『「収納が苦手」な人のための片づけ術』が発売になったのは東日本大震災の1週間前です。「大きな地震は100年後かもしれない…明日かもしれない」と書いた本の発売1週間後に東日本大震災が起こりました。その後も大きな地震が。私たちは地震大国に住んでいることを思い知らされます。

「3.11」の前から「捨てなくちゃ」とおもいながら、「いつか完璧に片づける!」いう人も少なくないです。捨てない理由を「もったないから」という人も。本当にもったいないのは、今日という時間だと、私はおもっています。

私の講座を受ける方の中には、「一気に捨てる」ことに疑問を持ったり、暮らしにくさを感じながら動き出せずもどかしさを感じている人も多いです。

「収納ワザの話かと思ったら考え方の話で、目からウロコ!」というのは講座を始めた20年以上前から聞きます。そもそも私が講座でお伝えしているのは、暮らしを管理できるようになること。片づけや収納で、どこにどんなものがあるのか把握し管理できていると、いつもの暮らしがラクで、「もしも」への備えにもなります

私が暮らしの管理の大切さに最初に気づいたのは30代前半のバングラデシュでの生活です。夫の赴任に伴って専業主婦として暮らし始めた当初は文句ばかり。本書にも書きましたが努力の方向を間違えて空しいおもいも体験。その後自分の人生の時間がもったいないことに気がついて(笑)、家事に精を出し、いつの間にかマネージャーのようになっていました。

 

ごちゃごちゃをほどくと頭の中も収納もすっきり!
その方法を一人でも多くの人に伝えたい

収納を管理の一環ととらえていた私の考え方が初めて雑誌に掲載になったのは2000年、インテリア誌「PLUS1Lliving」でした。そのときの記事の見出しが、「使いながら管理するクローゼット」。

このタイトルをつけたのが、当時「PLUS1Lliving」副編集長の藤岡信代さん。のちに編集長時代に本書の原本の企画編集担当。その後独立されてからは、私の講座録の編集を引き受けてくれました。ごちゃごちゃの解消法「3秒ルール」がブラッシュアップできたとすれば、藤岡さんのおかげです。

ごちゃごちゃをほどいて暮らしを把握するために、ものとていねいに向き合う。でも悩むことに時間をかけない。その具体的な方法が「イエス!」「それ以外」でざっくり分ける「3秒ルール」。

「3秒ルール」は、2009年婦人之友社「かぞくのじかん」片づけ特集記事で、読者さんとの出会いが発端。

ごちゃごちゃのものを一つひとつ手に触れて、「これは?」と意味を問いかけ。5時間後、読者さんは「頭の中がすっきりしました!」といいました。この読者さんが体験した「すっきり!」を困っている人に伝えたい。
その後、インテリア誌「PLUS1Living」の捨て方特集記事で、「3秒ルール」のフローチャートがはじめて誌面に掲載。その後も雑誌やブログで何度も記事に。

 

だから、今回改訂版が出るにあたって、どうしても書き直して伝えたかったのが「3秒ルール」でした。

最近、3年前の受講生さん(40代のビジネスマン)と再会。3秒ルールの「“イエス!”と“それ以外”は仕事にも役立ちます!もの、こと、スペース、なんでも使えます!」「all or nothingじゃなくてall or something」“それ以外”の中に何かがある!」と言われました。

白黒つかないのが暮らし。グレーはグレーとして抱える力も必要です。
何度も触れて目にしてものの意味に気づいていくこともあります。

講座中、受講生のみなさんがワークシートにかかれた気持ちや講座後にいただいたメールの言葉をこの本に引用しました。ありがとうございます。

予想外のことが起こるのが暮らしです。いろいろなことを力に変えて暮らしをらせん状に積み上げていきましょ。

2018年6月1日
土井けいこ

『「収納が苦手」な人がラクに「片づけ上手」になれる本』
主婦の友社発行